月1.7万円のClaude Maxに課金して自律AI組織を作ったら「ただの承認マシーン」になって絶望した話
月1.7万円のClaude Maxに課金して自律AI組織を作ったら「ただの承認マシーン」になって絶望した話
〜ループエンジニアリングと人間の「内圧」〜
こんにちは!
2026年8月26日(水)、ポート株式会社さんのオフィスで開催された MeetStageTokyo#1 に参加し、LT登壇をしてきました!
「LOCAL STAGE」さんにとって記念すべき第1回目のLT交流会とのこと、開催おめでとうございます!🎉
会場となったポート株式会社さんのオフィス(新宿フロントタワー5F)はとても綺麗で広々としており、非常に快適な空間でした。

▲ 会場の様子とイベントのオープニング

▲ 当日の名札
参加していた学生の皆さんの技術力や熱量がとにかく凄まじく、同じ28卒として「めちゃくちゃレベル高くて恐ろしい……!」と強烈な刺激を受けました。
そんなハイレベルな空間で、私は 「夏休みのAI課金と開発体験の試行錯誤」 について勢い全開で語ってきました。今回はその発表内容をブログ記事としてまとめます。
きっかけ:「とにかくやれ!!」に突き飛ばされた日
実は今回の登壇、事前に準備していたわけではなく 「当日に思い立って飛び入り参加を決めた」 ものでした。
背中を突き飛ばしてくれたのは、ゲームクリエイター・桜井政博さんのYouTube動画です。
- 参考動画: ゲームを作るには【企画・ゲーム設計】
画面越しに「とにかくやれ!!」「いますぐ支度して出るんだ!!」と怒涛の勢いで言われた気がして、気づけば当日のLT枠に滑り込み、30分でスライドを書き上げていました。

▲ 当日、勢いそのままに発表している様子
その勢いで語ったのが、この夏の「AIとの付き合い方」に関する壮大な失敗と発見の記録です。
月110ドル(約1.7万円)の Claude Max 5x に課金した
今年の夏休み、私は奮発して Claude Max 5x プラン に加入しました。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月額 | $110(約17,000円) |
| 日割り | 約600円 / 日 |
「毎日600円分、Claudeを骨の髄まで使い倒してやるぞ!!」
そう意気込んでいた時期が、私にもありました。
立ちはだかる「夏休みの現実」
現実は甘くありませんでした。
帰省やインターンなどが重なり、PCの前に座ってじっくり開発する時間がゴリゴリと削られていったのです。
「このままでは日割り600円をドブに捨ててしまう……!」
焦った私は、ある愚かな解決策を思いつきます。
失敗:トークンを食わせるための組織「claude-factory」
「時間がなくて自分で叩けないなら、Claude自身に自律動作させてトークンを消費させればいいのでは?」
完全に「使い倒すこと自体が目的」にすり替わってしまった私は、逐次実行で自律動作するシステム claude-factory を作りました。
自分が大まかな企画を投げると、複数のAIエージェントが独自に議論を重ね、設計から実装・制作までを自律的に進めるシステムです。
「これで寝ている間にもガンガントークンが消費されてプロダクトができるぞ!」とワクワクして動かしてみたのですが……。
2時間で襲ってきた強烈な虚無感
動かしてみてすぐ、強烈な違和感に襲われました。
「……なんか、全然面白くない。」
出来上がってくるコードや制作物を見ても、なんの達成感も湧かないのです。
それどころか、私がやっていることといえば、AIが勝手に進めた議論のチェックボタンを押すだけ。
「おれは何をやっているんだ? ただの承認マシーンでは……?」
AIが勝手に考え、勝手に作り、自分はただ「OK」を出すだけの存在。開発の楽しさどころか、体験としての満足度は最悪でした。
結局、claude-factory は わずか2時間で封印 することになりました。
なぜ虚無になったのか?「発散」と「収束」の力学
なぜ全自動のエージェント組織はあんなにもつまらなかったのか?
その原因を 「発散」 と 「収束」 という2つのプロセスで言語化してみました。
【発散(Diverge)】
アイデアに要素を足し、企画の立ち位置を広げること。
「何を・どんな価値で作るか」を模索・決定するフェーズ。
【収束(Converge)】
広げたアイデアを形にする工程。
コーディング、デバッグ、デプロイなど実際の実装を進めるフェーズ。
claude-factory の失敗は、「発散」も「収束」も両方AIに丸投げしてしまったこと にありました。
人間が「何を作るか(発散)」という意思決定を奪われ、手を動かす「実装(収束)」の現場からも締め出されると、そこに「自分が開発している」という手応えは一切残りません。
解決策:ループエンジニアリングによる「究極のバランス」
そこで行き着いたのが、「ループエンジニアリング(Loop Engineering)」 という開発スタイルです。
- 発散(企画・選択): AIに勝手に広げさせない。人間が主導権を持ち、自分で意思決定する。
- 収束(実装・作業): めんどくさいコーディングや定型処理は、AIにループで回して一気にやってもらう。
| アプローチ | 発散(企画) | 収束(実装) | 開発体験 |
|---|---|---|---|
claude-factory | AIに丸投げ | AIに丸投げ | ❌ 最悪(承認マシーン) |
| ループエンジニアリング | 人間が選択・主導 | AIが高速実装 | ⭕ 最高(1日1制作) |
このバランスを見出してからは、「自分が作りたいものを、圧倒的なスピードで形にする」 という開発の純粋な楽しさが戻ってきました。
今では嬉々として「1日1制作」のペースで個人開発を回せています。
それでも残る課題:トークン余りと人間の「内圧」
ループエンジニアリングによって開発体験は劇的に改善したのですが、新たな壁にぶつかっています。
そもそもトークンを使い切れない
1日1制作していても、
- 5時間制限: 70%未満
- 週次制限: 30%未満
「毎日600円使い倒すぞ計画」はどこへ行ったのか……というくらい枠が余っています。個人開発において、AIの処理能力はもはや人間の発想・企画スピードを遥かに追い越しています。
「内圧の高い企画」ができない
そして、一番痛感しているのが 「人間の側の企画力・動機の強さ」 です。
桜井政博さんの別の動画で語られている 「内圧」 という考え方が、まさに今の自分に刺さっています。
- 参考動画: たくさん入れてたくさん出す!【仕事の姿勢】
どれだけAIという強力なエンジン(出力装置)があっても、人間の中に 「これを作りたい!」「この課題を絶対に解決したい!」という強いインプットと動機(内圧) が充満していなければ、薄っぺらい企画しか出てきません。
まとめ
今回の試行錯誤を通じて学んだことは以下の4つです。
- 発散も収束も丸投げすると、人間はただの「承認マシーン」になり開発体験が死ぬ
- 「発散は人間、収束はAI」というループエンジニアリングが、現時点で究極のバランス
- AIの枠を使い切るボトルネックは、AIの性能ではなく人間の側のスピード
- ツールがどれだけ進化しても、最後に必要なのは「何を作りたいか・なぜ作るのか」という人間の内圧
AI時代において最も尊いのは、「俺、いま開発できてるやん!」というリアルな手応えと、内側から湧き出る企画の熱量でした。
改めまして、素晴らしい機会をくださったLOCAL STAGEの運営の皆様、会場をご提供いただいたポート株式会社様、そして刺激をくれた参加者の皆様、ありがとうございました!
もし同じように「Claudeのトークンを持て余している」「AIを使った個人開発で虚無感を感じたことがある」という方がいたら、ぜひ面白い企画や開発手法をぶつけ合いましょう!
関連リンク
- 登壇イベント: MeetStageTokyo#1 (connpass)
- 作成したリポジトリ: GitHub - yuritada/claude-factory