【Findy テック文化祭 参加記】学生LT11本と、「何を諦めるか」を決める判断軸
【Findy テック文化祭 参加記】学生LT11本と、「何を諦めるか」を決める判断軸
先日(2026/9/26)、Findy文化祭に参加してきました。

▲ 会場はfreee様のオフィス。ハロウィンの飾り付けがされていた
前日にGoogleのイベント(Gemini Day)に参加したばかりでしたが、今回のFindy文化祭はいつもの開発者界隈の空気が流れるイベントでした。学生LTで共有されたそれぞれの開発プロセスや技術選定のリアルな話、そしてdip田中雄登さんのワークショップでの「トレードオフと判断軸」の整理など、思考を深める良い機会になったので記録として残しておきます。

▲ 受付でもらったネームタグ。好きな技術の欄は「AI、LLM、あと全部」
学生LT:「人生で一番、時間と情熱を注ぎ込んだ技術やプロダクト開発」
学生LTは全11名。各自が直面した技術的な壁や運用のリアルが率直に語られていて、実践ベースの面白い知見が多くありました。

▲ LT会場。ステージ前のクッションに座って聞くスタイル
機械学習に学ぶプログラマーの生存戦略 / 手羽先さん
AIの進化で「エンジニアの仕事が減る」「淘汰される」という危機感を背景に置きつつ、機械学習の仕組みになぞらえて「プログラムも勾配降下ができる」「AI時代も情熱を持って変化に適応し続ける」というスタンスが提示されていました。技術の変化を悲観するのではなく、自分自身をどう最適化していくかという視点が印象に残りました。
Swiftでライブラリを作って、AtCoder入緑に再挑戦 / keekiさん
AtCoderにおいて、定番のPythonではなくあえてSwiftで自作ライブラリを構築して挑戦している話。「自分が欲しいものを作るのが一番大事」というシンプルな動機を大事にしていて、効率や王道にとらわれすぎない開発の楽しさを再認識させられました。
絶っっっ対に、バズらせる!!! / Riochinさん
個人開発は「公開すること」がスタートラインであり、作って終わりにしないためのアプローチが語られました。プレリリースや拡散依頼で初速を作り、継続的なバージョンアップとGitHub Actionsによる運用の自動化を整え、月間500人が使うプロダクトへ育てていくという、泥臭くも堅実なグロースの知見でした。
ハードウェア開発のお話 / ののっちさん
論理演算の基本回路から組み上げたハードウェア開発の話。防犯ブザーが作動した際、周囲の人のスマートフォンに通知を届けるSOSビーコンを自作した事例でした。Webやアプリにとどまらず、物理デバイスと電波を用いて実空間の課題に落とし込む構成が興味深かったです。
個人開発はCloudflareにすべてを賭けろ / asahiさん
Cloudflareの充実した無料枠や、コールドスタート・スリープへの強さをベースにした実践的なトーク。AIエージェント関連の機能群も含め、近年の個人開発において基盤として選定するメリットが整理されていました。困った際も「Cloudflareを使いたい」とAIに前提を伝えることで設計を進めやすいという実体験も実用的でした。
作っては壊す! AI Agent構築探求! / 副会長さん
AIエージェント単体を完成させること以上に、「エージェントが動作するための実行基盤そのものを作る」というアーキテクチャ視点の発表。エージェントの振る舞いやロジックが流動的だからこそ、作っては壊すサイクルを前提にした土台設計が必要になるという考え方は納得感がありました。
ゼロからサービスを作るということ / tsuyuniさん
インフラ周りの奥深さと、技術選定の難しさについての共有。経験のなかったAmplifyをテックリードの立場で導入した際、大きな負荷がかかったというリアルな反省が語られました。
発展途上の基盤に安易に乗るのではなく、枯れた技術をしっかり比較・吟味して選ぶことが大事。
この言葉の通り、チーム開発における選定責任の重さを考えさせられる内容でした。
Reactでアプリを作った!…で、次なにする? / markun4649さん
「Reactで画面を作ってAPIを叩く」という段階から、フルスタックフレームワークとしてのNext.jsの特性を理解していく過程の話。レンダリング手法による挙動の違いが整理されていました。
| 手法 | 概要 |
|---|---|
| CSR | ブラウザ側でUIを動的に更新する |
| SSR | リクエストごとにサーバー側でHTMLを組み立てる |
| SSG | ビルド時にHTMLをあらかじめ生成しておく |
「見た目は同じでも情報の届き方が全く違う」という気づきから、「どう作るかではなく、なぜこの作り方にするのかを用途に合わせて選ぶこと。Next(次)は、作り方を選ぶこと」というまとめが非常に明快でした。
DBMS、キモくね? / はやとさん
SQLの書き方や内部エンジンの挙動、DMLとDDLの違い、そしてSQLite特有の仕様などに対するマニアックな考察。「キモい」という表現を使いつつも、各データベースの特性や挙動の差異を面白がりながら深く掘り下げているのが伝わってくる発表でした。
現在進行系の人生最大規模の開発 / あひるさん
和歌山大学システム工学部内のITものづくりプロジェクト「appLii」における取り組み。審査を経て予算を獲得し、開発の成果に応じてボーナスも狙える仕組みの中で、本気でプロダクト開発に向き合っている事例でした。大学のリソースを活用しながら真剣に開発を回す環境が整っているのが印象的でした。
制約の中で動かす駐車場管理システム開発 / UCN/yushinさん
学内DXを手掛ける団体による、駐車場の混雑管理システムの話。「どうやって検出するか」という技術的な問いから一度立ち返り、「現場の制約の中で、何ができて何ができないか」を整理し直したプロセスが語られました。最終的には人力でのカウントも併用しながら運用を成立させ、利用者の声を得られたとのこと。制約を見つめ直すことの重要性が伝わる内容でした。

▲ 交流スペース。LTの合間はここで参加者同士が話し込んでいた
dipワークショップ:トレードオフを決断する「判断軸」
後半は、15職種を経験されたdipの田中雄登さんによるワークショップでした。テーマは「意思決定に必要な判断軸の整理」。
地味な仮説検証と「諦める力」
業務において求められるのは、単にあらゆる観点を網羅することではなく、「トレードオフの決断ができること」。一発逆転のような解決策を探すのではなく、地味な仮説検証をアジャイルに繰り返していくことが本質であるという話でした。
トレードオフができない最大の理由は「優先順位をつけるための判断軸」がないから。
トレードオフとは、「何を諦めるかを決める力」である。
典型的な失敗例として挙げられていたのが以下の2点です。
- 迷走: 判断軸がないまま、手当たり次第に資格や勉強に手を出す
- 計画主義: 完璧な計画を作ることに時間を費やし、動き出せない
小さな仮説を立てて軌道修正を繰り返すために、ワークショップでは「Why so ?」「ありたい姿」「So what」という3つの要素を整理しました。
ワークショップで整理した自分の軸
このフレームワークに沿って、自分自身の判断軸を棚卸ししてみました。
- Why so(探求の源泉): 「なぜ? どうして?」の探求。新しい情報を理解した瞬間や、それらを実践に投入する瞬間に一番面白さを感じる。誰かや何かの構造を「理解」すること自体が好き。
- ありたい姿(理想・基準): 構造的に美しいこと。すべて「〜〜だから」と論理的に説明がつく状態。筋の通ったアイディアを作ること。
- So what(行動・アウトプット): 自分の経験から様々な工夫やアイディアを出し、筋を通して形にすること。
開発や日々の意思決定において、何を残して何を捨てるかを判断する際の基準として、改めて言語化できたのは有意義でした。
感想:「やっぱこれよ。この界隈だよ」
イベントを終えて感じたのは、シンプルに「やっぱこれよ。この界隈だな」ということでした。
前日に参加したGoogleのGemini Dayは、非エンジニアや初学者も多く、技術の深さよりも「1機能1点突破のアイデアと手数」で課題をハックしていくコミュニティで、あれはあれで普段と違う視点が得られて面白かったです。
ただ、そうした別領域のイベントに行った直後だったからこそ、翌日のFindy文化祭でいつもの開発者界隈に戻ってきたときの馴染み深さが際立ちました。
お互いにどんな技術領域を触っているかを知っていて、実装やインフラの泥臭い試行錯誤の話が自然に通じる空気感。「今こういうのを作っている」「LTで登壇した」という実践の共有が日常的にあり、そこから「次の企画を手伝ってほしい」「こんなイベントがある」と情報や繋がりが広がっていく。今回の参加もそうした知人経由の繋がりがきっかけでした。
もちろん特定のコミュニティだけに固執するのは視野が狭まるので、前日のように違う毛色の場へ顔を出すことも続けたいと思います。ただ、ベースとして同じ熱量や思考性を持つ仲間と深い技術の話ができる場所があるのは、やはり心地よく、開発を続ける上での良い刺激になります。
持ち帰った学びと判断軸を、普段の開発やプロジェクトへ反映させていこうと思います。

▲ 当日の集合写真